製造業のコンテンツマーケティングをKEYENCEから学ぶ

元半導体エンジニアで現在マーケターの”Markethink代表”です。
製造業の顧客の気持ちもわかるマーケターとして、電気電子業界のマーケティングをサポートに携わっている目線から、いつも参考にさせていただいているKEYENCEのWebでの集客の凄いと思っている点をまとめました。

超高収益率のすごい会社 それがKEYENCE!!

KEYENCEは、自動制御機器や計測機器を製造販売する会社で、年収ランキングで上位にランキングされることでも有名です。
ちなみに、2020年の平均年収は、なんと1839万円(平均年齢35歳)[ダイアモンド・オンライン] …。すごいの一言です。

なぜ、それほどまでに高い収益をあげることができているのでしょうか?
よく、付加価値を生み出すビジネスモデルをベースとした、「ニーズを理解した上で業界初の製品を作り出す開発力」、「顧客のニーズを掴むコンサルティングセールス力」などが注目されています。
外部リンク:キーエンスに学ぶ “高収益体質” 経営のメソッド
また、「システム全体でこんなことができます!!」という”こと売り”が高いレベルで実現できているところも圧倒的な強さだと思います。  

ですが、確実にKEYENCEのマーケティングも「集客」という点で業績に大きく貢献しています。
KEYENCEのマーケティングはすごいレベルで全体設計がなされていますので、今回はそこをマーケター目線で、深掘りしていきたいと思います。
Web上の集客から顧客情報取得までにポイントを絞って、KEYENCEのマーケティングを紹介していきますので、最後までお付き合いください。


※参照元:KEYENCE HP リンク

では、早速本題ですが、事例を交えて話していきたいので、ここからは、KEYENCEが取り扱っている製品の一つである”画像処理システム”を題材にWeb集客のステップに合わせて凄さを確認していきます。

STEP1:検索からの流入を制する記事コンテンツの凄さ

KEYENCEのサイトへの流入の経路はそのほとんどが検索流入です。
サイト解析ToolのSimilarwebで確認すると、6ヶ月でのべ199万人が訪れており、さらにその69%がWeb検索からの流入であることがわかります。
つまり、1ヶ月に約14万人が検索でサイトに流入しているという計算になります。



※参照元:Similarweb

では、それほどの流入をどのように実現しているか、「画像処理システム」を例に見ていきたいと思います。
画像処理システムに関連するユーザーが検索しそうなキーワードを入力して確認してみました。

(1)製品のカテゴリ名での検索を制する

例: 「画像処理システム」Google月刊キーワード検索数:50
まず取り上げたいのは、”製品のカテゴリ名”で調べてくる場合です。
身近なBtoCの例だと、ビデオカメラが欲しい人が「ビデオカメラ」と調べるイメージです。
このような”製品のカテゴリ名”で検索を行う顧客は、製品の購入意欲が高く大変優良な顧客になりえます。

このキーワドの検索で、KEYENCEはしっかりとGoogleの検索順位1位をとっています。


そして、ここで注目したい点が、「画像システムとはを説明するページ」と「画像システムの商品情報ページ」の両方が上位表示されている点です。
「画像システム」で検索する人の検索意図を考えた場合に、”画像システムがなんであるか知りたい”というKNOWクエリと”画像システムを買いたい”というBUYクエリの2つがありますが、その2つを網羅できているということです。
これによって、画像システムを検索した人がKEYENCEのサイトを訪問する割合(クリック率)をあげることができています。

(2)製品のアプリケーション関連の検索を制する

例:「外観検査」Google月刊キーワード検索数:1300
次に取り上げるのが、顧客がアプリケーションで調べてくる場合です。
先程のビデオカメラの例であれば、「動画撮影」というキーワードで調べるような場合です。「動画撮影」に興味がある人の中には、「これから動画撮影をする機器を買おう」と考えている人も含まれているため、このようなキーワドで流入した顧客にビデオカメラを訴求することも非常に有効なマーケティングです。

画像処理システムの場合は、「外観検査」がそれにあたりますが、ここでもKEYENCEはしっかりと検索順位1位を獲得しています。

  さらに、ここで注目したいのは、KEYENCEのサイトが”強調スニペット表示”になっているという点です。強調スニペット表示は、他のサイトと低して、優秀であることをGoogleが評価している場合に適用されるもので、「画像」なども合わせて表示されているので、かなり高いクリック率が得られます。

(3)顧客の困り事での検索を制する

例:「コンデンサ 寸法異常」Google月刊キーワード検索数:10以下
最後は、顧客が解決策を求めて、困っていることを検索するケースです。
ビデオカメラの例であれば、「ビデオ 手振れ」といったキーワードなどがそれにあたります。そして、自身の販売するビデオカメラの特徴が、”手振れ補正”にある場合には、それを手振れで困っている人にうまく知ってもらうことで、興味を持ってもらえる可能性が高くなります。

このようなキーワードでも、KEYENCEは検索順位1位を獲得しています。

困り事のキーワードは多岐に渡り全てをカバーすることは難しいですが、KEYENCEは様々な用途例のページを作成することで、そのどれでも高い検索順位を獲得しています。

(4)その他幅広いコンテンツにより流入を制する

KEYENCEの流入を支えているのは、ここまでのような、製品に直接するキーワードだけではありません。
想定した顧客が、調べそうな情報のコンテンツが用意されています。
例えば、以下のようなものがあります。

コンテンツ内容
FA用語辞典工場の自動化に興味がある人が調べそうなファクトリーオートメーションの用語がまとまっている
FACTORIST東南アジアなどに出張する人が調べそうな内容がまとまっている
FA英会話講座海外に工場があるエンジニアのために工場で使用する英単語やフレーズがまとまっている


参照元:https://www.keyence.co.jp/solution/

これらのキーワードで流入した顧客がすぐに製品を買う可能性は低いですが、今後購入の可能性がある顧客の情報取得や、顧客との関係性を良くする(エンゲージメントを高める)ために働きます。

「Webサイトへの流入」のまとめ

このように、顧客のレベル感及び調べ方の違いによって異なるキーワードに関して、そのどれもで検索順位1位をとるための充実した流入用のコンテンツが作成されているという点が、KEYENCEのすごいポイントです。
そして、それぞれのページを確認しても、図解でわかりやすく、且つ内容が充実しており、なかなか他社が1位を取り返すことが難しいように作り上げられています。

STEP2:直帰されない動線の確保の凄さ

検索によって、KEYENCEのサイトに流入してきた顧客に次のアクションをとってもらうというのは非常に重要です。

KEYENCEのサイトに流入した方で次のページを開かない方(直帰率)はわずか48%、訪問数あたりの平均ページビュー数は4.3ページと驚異的な数字です。
Google Analyticsを用いると、簡単に自社サイトの計測できるので、ベンチマークをするといかにすごいかがわかると思います。

なぜ、このような低直帰率になっているのか、ユーザー目線で見ていきたいと思います。
ここで注目するのが、画像システム関連の記事が「画像処理.com」というサイトとしてまとめられている点です。


参照元:https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/visionbasics/

ここでは、「画像処理を学ぶ」、「画像処理システムの用途」、「業界別導入事例」、「選定のポイント」、「導入のメリット」という、温度感に応じたコンテンツが大量に用意されています。

コンテンツコンテンツ数温度感内容
画像処理を学ぶ20画像処理に興味を持ち始めたレベル
ハード面、ソフト面、実践面から、初心者レベルのお客様に向けたコンテンツが揃っています。
画像処理システムの用途7画像処理で実際に何ができるか気になっているレベル
外観検査、文字検査、寸法測定など、画像処理で何ができるのかを紹介するコンテンツが揃っています。
業界導入事例9画像処理で実際に何ができるか気になっているレベル
自動車業界、電子デバイス業界、半導体業界など、サイトに流入した人が想像しやすい用途を事例を交えて解説しています。
選定のポイント4実際に導入したいと思っているレベル
カメラの選定、レンズの選定など、実際に選ぶ際に気をつけるべきポイントを紹介しています。
導入のメリット6実際に導入したいと思っているレベル
購入前の顧客の背中を押すためのコンテンツ。導入に対するメリットを示し、投資に対するROIをわかりやすく訴求しています。
「動線の確保」のまとめ

流入した顧客が常に気になるコンテンツを用意して、まとめておくことで このように、顧客のレベル感及び調べ方の違いによって異なるキーワードに関して、そのどれもで検索順位1位をとるための充実した流入用のコンテンツが作成されているという点が、KEYENCEのすごいポイントです。
そして、それぞれのページを確認しても、図解でわかりやすく、且つ内容が充実しており、なかなか他社が1位を取り返すことが難しいように作り上げられています。

STEP3:顧客情報取得のためのダウンロードコンテンツの凄さ

このように、サイトに流入し、必要な情報を確認した顧客に対して、KEYENCEのサイトは、ホワイトペーパーやカタログなどのダウンロードコンテンツを進めてきます。
そしてこれこそが、顧客情報を取得するための仕組みです。

以下のように、画像処理システムだけで合計8129個もの資料がダウンロードコンテンツ化されています。

カタログ41
技術資料304
CAD(図面)7541
マニュアル243

この中で特に注目したいのは、技術資料です。
通常、カタログやマニュアルをダウンロードコンテンツとして用意されているサイトが多いですが、これらのコンテンツは製品に強い興味を持っている「温度感の高い顧客」が対象になります。
それに対して、技術資料の場合では、テクノロジーガイドや事例集など「温度感が低い顧客」も対象に出来るのが特徴です。
これらのKEYENCEの技術資料の内容を温度感別に見てみました。

温度感内容
テクノロジーガイド

○○を学ぶ、○○とは、〇〇のすべて

製品ガイドブック

運用のヒント
事例集・トラブル事例

〇〇で出来る事

アプリケーション集
シリーズ徹底比較

選定資料(選び方)

〇〇が選ばれる理由

導入よる収益改善

このように、様々な温度感そして、様々な業界の顧客に対するコンテンツを用意することで、より多くの顧客に資料をダウンロードしてもらうことができます。
また、各資料のネーミングも工夫されていて、各温度感のユーザー思わずダウンロードしたいと思うだろうなというネーミングになっています。私の経験でも、BtoBの場合は、「選び方」、「比較表」、「価格表」などは非常に人気のコンテンツになります。

ところで、なぜこのように「温度感の低い顧客」の顧客情報も取得しているのかという点もポイントです。
あくまで予想の範囲ですが、ここで入手した貴重な顧客とは、マーケティングオートメーションツールなどを活用しながら、メルマガなどを通じて関係性を深めて行くことが可能となるからです。
そして、そのように関係性を深めた顧客が実際に欲しいと思った時にはそれを見逃さず、営業がアプローチするということができます。

「ダウンロードコンテンツ」のまとめ

Webサイトに訪問した顧客、さらには周回している顧客に、その温度感に応じたダウンロードコンテンツを用意して、それをコンテンツ内やバナーやポップアップで訴求していくことで、顧客の情報を得ることができます。 そして、よりダウンロードコンテンツのダウンロード数を上げるためには、顧客が欲しい情報を考えて、資料のネーミングを考えることも大切だと思われます。

KEYENCEの集客力の凄さのまとめ

このように、大量の顧客に流入してもらい、情報を提供して興味を持ってもらい、ダウンロードコンテンツで顧客の情報を入手するという仕組みがしっかりと作られていることがわかります。
ここまでの充実したコンテンツや資料のラインナップは、大手のKEYENCEだからこそですが、同じような仕組みを作ることは、中小の企業でも十分可能です。
KEYENCEの手法を参考にして、ぜひ自社でも試されてはいかがでしょうか。

Markethinkでは、このような仕組みの作り込み部分のお手伝いをしています。
詳しくは、是非お問い合わせください。

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